質問<3654>2007/12/20 from=かもめ 「関数記号のfについて」
教科書や参考書で
数列の場合、一般項をとかとかとか
a、b、c順に並ぶのに対し
関数の場合、f(x)とかg(x)とかh(x)とか
fから始まることが多いのには、何か理由があるのですか。
★希望★完全解答★
はい、面白い質問ですね(笑)。全然数学の質問じゃないんですが(笑)。
ええと、これは数学と言うより「語学の質問」なんですよ(笑)。
f、g、h、…と並ぶのはまあ、「アルファベット順」でいいとして、
「じゃあ何でfからやねん?」
って事ですよね。
と言うのも、英語/フランス語でfはfunction(関数)の頭文字だから、です。
また、ドイツ語でもfunktion、と言いますね。
(大体近代で数学が発達したのはイギリス、フランス、ドイツの3つの国なんで、この3つ押さえておけばいいでしょう)
それでfから数え始めているのです。
ちなみに日本語ではf(x)と言う表記を
エフエックス
と読みますが、英語では実際どうなのか、と言うと
f of x
と読みます。
つまり言外に
function of x (xの関数)
と言ってるんです。日本語では「xの関数であるエフエックスが…」とか言い換えてますが(笑)、実は英語の感覚ですとそんな「言い換え」は必要無いんです(笑)。非常にダイレクトな読み方なんですよね(笑)。この辺、言語の相違は面白いです(笑)。
もう一つトリビアを。
実は日本語でも「関数」は「関わりのある数(同士)」と現代では解釈されていますが、元々はそうではなくって、特に古い教科書とか「古い筆記法に拘る人」が書いた本なんかには「函数」(かんすう)と書かれています。「函」ってのは函館の「函」って漢字ですが、意味はまあほぼ「箱」ですね。ってか「函館」以外全然お目にかからない漢字です(笑)。
「箱の数ってどんな意味やねん?」
とツッコミ処が満載なんですが、実はこれは字面には意味がありません。
元々「函数」とは中国語で「ハンスー=hán shù」と読み、その「ハン」は元々ヨーロッパ言語系の読み方である「function」の「fun」の音を中国語でアテたモノです。「アーノルド・シュワルツェネッガー」の発音により、中国語表記が「阿诺德.施瓦辛格」とか言うワケが分からん漢字になるのと一緒ですね(笑)。
つまり、日本語の「関数」もルーツを辿れば、元々はヨーロッパ言語系の「function」そのものなんですね。
しかし、その「意味がない」函数を音読みが「カン」で同じ事から「関わりのある数(同士)」と当て字する、と言う日本人のセンスはなかなかのモノだと思います。歴史的には日本人はこう言う「当て字」が大好きなのです。
数学では「他にもどうしてそんな文字を使ってるのか?」と言う例があって、まあ、ある種のケースでは「頭文字」だったりしますね。そのテの事を調べるだけでも(数学の実力が上がるかどうかは保証しませんが・笑)「語学の勉強」にはなるんじゃないかな、とか思います。
代表的な例:
- 円の半径にrが良く使われるのは、英語で円の半径をradiusと言うから(これはドイツ語でも同じ)。
- 円周率をπとするのは英語で「周囲」を表すperipheryから来た…と言いたい所だがこれは大嘘(笑)。が、あながち見当ハズレでもない。実は同様の単語がギリシャ語にあって、それをπεριφερειαと呼び、その頭文字がπ。元々英語のperipheryの語源にあたる(かそれに近い)。なお、ギリシャ文字は読みづらいが、対応する英語のアルファベット(ローマ文字)は左からp・e・r・i・f・e・r・e・i・aとなる。
- 虚数単位がiなのは英語でimaginary number(想像上の数=実体を持たない数)と言うから。フランス語ではnombre imaginaire、ドイツ語ではImaginäre Zahlと呼ぶ。
- 一般項等の添字でnが好まれるのは、英語のnumber(数字)から来ている。フランス語ではnombre。
- 等差数列に於いて公差をdと表現するケースが多いのは、英語のdifference(差)から来ている。フランス語ではdifférence。
- 同様に、等比数列に於いて公比をrと表現するケースが多いのは英語のratio(比率)から。フランス語でも同様。
- 数列の和が等とSが好まれるのは、英語で「和」をsum、と言うから。フランス語ではsomme、ドイツ語ではSummeと呼ぶ。また、総和記号でΣが使われたのも、元々ギリシャ文字でΣはSに当たるから。積分記号が∫なのもライプニッツがΣから作ったワケだが、結局S→Σ→∫と進化(?)している。
- 不定積分で現れる積分定数Cは英語で定数の事をconstantと呼ぶことから来ている。フランス語ではconstante、ドイツ語ではKonstante。従って、場合によっては(特に古くはドイツの影響を受けた日本では)代替文字として積分定数にKが使われる場合もある。
- 微分記号dx等のdは微分(differential)のdから。フランス語ではdifférentiel、ドイツ語でもDifferentialと呼ぶ。
- 幾何ベクトルに限らない一般的なベクトルを指す場合、、等の表記が好まれるのは、もちろん英語/フランス語/ドイツ語でvectorだから。vは納得できるけどuは納得できない、と言うかもしれないが、実は歴史的に、アルファベットの成立過程ではvもuも全く同じ文字であった。その証拠に、英語ではwはダブル・ユー(double u=二つのu)だがフランス語ではドブラ・ヴェ(double v=二つのv)である。従って、vの代替にuが使われるのは必然とも言える。ただし、物理でのvはvelocity(速度)の頭文字であって必ずしもvectorではない(が、物理でもuは速度を表すのに代替文字として良く使われる)。
- 確率を表すパラメータにpが良く使われるのは、英語のprobability(確率)から来ている。フランス語ではprobabilité。またその由来の為に、pの代替文字としてギリシャ文字のπも「確率」を表すのにたまに使われたりする(この場合は円周率とは全然関係ない)。
以上です。
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